夏の小袖

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映画「夜明けのすべて」がよかった

映画「夜明けのすべて」を観た。よかった。

前情報として知っていたことは、映画館などのCMで流れているくらいのことだけだった。原作は未読だ。

つい数日前、この映画を観た知らない人が、「すべての生きづらさを感じている人はみたほうがいい」というようなことを、ネット上に書いていた。へえ、なら観ようかな、と思った。もともと、気になっていたのだ。

一人で、池袋のTOHOシネマズへ行った。ちょうど建国記念日で、電車も街も映画館も、人が溢れていた。田舎者には大都会である。

「夜明けのすべて」は、しずかな映画だった。静謐の中に生きづらさと、そこに差す一筋の光が、ありありと描かれていた。
私も、まあ、いまだって生きづらさを感じている。だけど、以前はもっと生きづらいと思っていた。世の中は敵だらけで、ここは地獄の底で、人生なんて漫然と死を受け入れるだけの時間だと思っていた。
だけど、いまは違う。どうにか生きていこうという気になっている。
そう思えるようになったのは数年前だ。ひょんなことから、いろいろなことがあり、いろいろな人々と出会い、なにかが見えたような気がした。生きていかなければならないと思った。
映画を観て、そんなことを思い出した。

作中の言葉を借りれば、曇りの日もあるし、最悪だなと思う。だけど、夜の中での出会いは、夜明けに導いてくれることもある。夜の中でしかあり得なかった出会いもたくさんあった。ありがたいことだと本当に思っている。
やがて夜明けは訪れ、そして人生は続いていくだろう。私はまだ夜明けを見ていないけれど――それでも、夜の中を生きていこうと思っている。

「夜明けのすべて」は、いい映画だった。生きづらさを感じている人や、かつて感じていた人は、なにか感じるものがあると思う。

私は、いま見えてきている何かは、ひょっとしたら夜明けなのかもしれないな、などと、この映画を見て思った。